―――かぐや姫。
―――え?
―――かぐや姫、みたい。
―――僕が?どうして?
―――月に焦がれ、月に帰る。
―――僕はそんな綺麗なものじゃないよ。それに、
―――それに?
―――かぐや姫は不死の薬を渡すけど、僕は死をもたらすものだ。
―――それを言うなら、かぐや姫は求婚する4人に厳しい試練を与えた。その中には死んでしまう者もいた。これはこれで「死をもたらすもの」だけど。かぐや姫は綺麗なだけの話じゃないし。
―――でもさ、僕は全てのものに死を与える存在だよ。
―――あ、ほんの短期間で成長したのも似てる。ファルロスがいきなり大きくなって綾時になったし。
―――別にいきなり大きくなったわけじゃないのに。君と一緒に過ごしてきたわけだしさ。……ねえ、いきなりどうしたの?
―――悔しいと思っただけ。
―――……どうして?
―――月に帰るかぐや姫をなんとか止めようとしても、それはかなわなかった。月の者には手を出せず、彼女は月に帰ってしまった。そんなところまで似なくても、よかったのに。
―――違うじゃないか。君たちは月の者を打ち倒した。それは覆されたのに、どうして?
―――かぐや姫=僕の友達は、月に帰ってしまうだろう?
―――……ありがとう。まだ、友達と呼んでくれるんだね。
―――君にとって僕は友達じゃないのか?
―――そんなこと!……本当に、ありがとう。すごく嬉しい。
―――……もう帰るのか?
―――うん。君のおかげだよ。僕はまた眠ることができる。この美しい世界を死に包むことなく……このこともお礼を言わなきゃ。ありがとう。
―――嬉しいような、悲しいような……分からないな。
―――おやすみ。でも君は早く起きたほうがいいよ。皆、心配してるからね。
―――ああ、そうか……そうだったな。……おやすみ。
―――また、会おうね。
―――――
ファルロスや綾時は男の子だし、彼に「かぐや姫って……僕は男なのに」と言わせようとして、でもニュクス・アバターな彼の場合性別の観念なんかあるのかと思ったので却下。
とにかく「月だよなーかぐや姫みたいだなー」との思いつきで書いていったので煮え切らない感じ。書いている途中でオチもころころと変わったし。