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真田先輩とぶたぶたさん。肋骨折れてた時期です。
……どうせあと少しで治るのだ。その時のための準備をしておかねばなるまい。いざ実戦というときに役に立たないようではいけない。
美鶴にこの行為が見つかればただではすまない――まあ処刑よりましだと思うが――だろうが、黒澤さんには適当に言っておけばばれない……と思う。そうやって自分に言い聞かせながら真田は交番の中へ入った。
入った瞬間目に付いたのは、可愛らしいぶたのぬいぐるみだった。
入ってすぐの机の上にちょこんと置いてある。薄ピンク色で黒ビーズの目、右の耳がちょっと後ろに反り返っている。大体バレーボール大の大きさだ。今まではこんなものはなかったはずだが……マスコットキャラクターにしてはシンプルすぎる。
「どうしましたか?」
渋めの中年男性の声が聞こえた。黒澤さんの声ではない。誰だと思っていると、目の前のぶたのぬいぐるみがひとりでにぴょこんと立ち上がった。
「落し物か何かですか?」
ぶたのぬいぐるみの鼻がもくもくと動いた。
……ぶたの、ぬいぐるみ?
思わず室内を見渡して黒澤さんの姿を探す。しかし部屋には人は誰もいなかった……ぶたのぬいぐるみを除いて。
「……黒澤さん、は」
「ああ、黒澤巡査ならいませんよ。彼に用でしたか」
机からぴょんと飛び降りてぶたのぬいぐるみは真田のほうへと向かってくる。……く、来るのか!?思わずファイティングポーズをとりそうになったのをかろうじて止めた。
「私も黒澤巡査を待っているので、用があればお聞きしましょうか?」
影時間やシャドウで「普通でない」現象を受け止めることができていると思っていたが、そんなことはなかったようだ。というかこれはそっちと関係があったりするのだろうか。実はすごくファンシーな格好をした新種のシャドウで―――いやいややつらが現れるのは影時間で、今は違う。
真田が思考の海に入って押し黙っていると、その沈黙を勘違いしたのかぶたのぬいぐるみはごそごそとあたりを探った。
「失礼しました。私は巌戸台署のほうに出向に来てます、山崎ぶたぶたといいます」
腕をのばして名刺を差し出している。思わずそれを受け取った。
そこに書かれているのは、どこかの警察署の名前と……「山崎ぶたぶた」の文字。
……刑事?ぶたのぬいぐるみが、刑事?
「……そうか」
真田はぽつりとそう呟くと、踵を返して交番から立ち去った。
……武器を買えないのだから、どうしようもないしな。
……きっと、夢だしな。
後日、黒澤さんから美鶴に交番に行ったことがばれてしまい、真田は散々小言を受けることとなる。
……どうやらぶたのぬいぐるみは本当にいたようだ。
名刺だってそこには、「山崎ぶたぶた」―――そう書かれている。
―――――
日が悪かった。まだ買っちゃだめというぶたぶたさんからのお達しだったのでしょう(ぇ
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